【歯科税務】家族やスタッフに治療を行った場合の税務の取り扱い
歯科医院の税務問題のひとつとして、
家族や従業員に対し治療を行った場合の自家治療を行った場合の
課税処理について、述べたいと思います。
■保険診療
歯科医師国保の場合は、自家治療は認められておりません。
ですので、保険診療はないですね。
次に、協会けんぽですが、
協会けんぽでは、自家治療は可能です。
窓口負担分をスタッフから、徴収しているのであれば、
税務上、何も問題ありません。
では、窓口負担分を徴収せずに(診療代金を貰わないで)、
診療報酬の支払機関にはレセプト請求を行っている場合はどうでしょうか?
この場合では、税務上の問題が発生します。
そのために、次の処理を行う必要がでてきます。
①家族の場合は、窓口負担分については、事業主貸での処理が必要です。
②スタッフの場合は、一旦収入に計上した上で福利厚生費等で処理が可能です。
■自費診療
自由診療分については、
通常の患者さんと同じように、自費治療の代金を徴収しておけば、
何も問題ありません。
しかし、徴収しない場合は、
材料の原価相当分が現物給与(経済的利益)として課税されます。
そのために、対策としては、次の①、②が考えられます。
①材料代相当額(税込み)を徴収する。
自費収入として、収益に計上する。
②材料代相当額(税込み)を徴収しない。
給与として費用処理し、収入として自費収入を計上する。
歯科医院にとっては、費用と収入が計上されますので、利益は増えません。
自費治療を行った従業員にとっては、給与として、所得税・住民税等の課税対象となります。
なお、歯科医師が家族や従業員のために提供した診察、処置等については、
役務提供と考えられます(棚卸資産の自家消費には該当しない)ので、
総収入金額に計上する必要はないと考えます。
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参考法令
・棚卸資産を自家消費した場合には、その消費したときにおける棚卸資産の価額に相当する金額を事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入しなければならない(所法39)。
・医薬品等の棚卸資産を消費した場合には、原則として消費したときの一般の患者に請求する価額で総収入金額に算入しなければならない(所基通39-1)。
・ただし、備え付けている帳簿に、自家消費分として消費した薬品等の仕入価額で計上し、事業所得の総収入金額に算入しているときは、計上した価額が一般の患者に請求する価額のおおむね70%未満の価額でない限り、仕入価額での計上が認められている(所基通39-2)。
令和4年1月21日 歯科マネジメントサポーター 仕明 一宏