歯科医院の事業承継(個人事業編①)

歯科医院の事業承継(個人事業編①)

今回は、個人事業の歯科医院における事業承継について、述べたいと思います。

 

後継者が、子息であれ、親族やスタッフだとしても、現在の歯科医院は閉院と言うことになります。

そして、新院長が開業するということになります。

 

特に、一番多いパターンが親から子へ引き継ぐことによる事業承継ではないでしょうか。

 

この場合には、院長が生前に事業承継をする場合と亡くなったことで事業承継する場合が考えられます。

前者、すなわち旧院長が生前の時に、親(旧院長)から子(新院長)への事業承継を考えてみます。

※)後者の場合だと、葬儀の手続きや相続の手続きがあり、大変な気力と労力が求められます。

また、事業用資産(診療所や器材など)は相続財産になりますので、

遺族の遺産分割協議の対象です。

 

■手続きはどうする?

前述したように、旧院長は廃業となり、新院長は開業となります。

従って、下記の届け出が必要になります。

1)旧院長

・保健所 診療所廃止届

・地方厚生局 保健医療機関廃止届

・税務署 個人事業廃止届

・歯科医師会 退会届

 

2)新院長

・保健所 診療所開設届

・地方厚生局 保健医療機関指定申請書

・税務署 個人事業開業届・青色申告承認申請書

・労働基準監督署 保険関係成立届等

 

■診療所はどうなる?

引き継ぐ診療所及び診療所用土地が自己所有の場合を考えてみましょう。

 

税金の取り扱いが動産と不動産の取り扱いが違いますので、

ここでは、不動産と不動産以外に分けて述べたいと思います。

 

1)不動産(土地、診療所建物)

不動産(土地、診療所建物)を承継させる方法は、3つの方法が考えられます。

 

①売却(譲渡)

著しく低い金額ではない適正な売却価額での取引が必要です。

目安として、時価の80%です。

そして、もし、譲渡益が出ていれば、売主(旧院長)は、譲渡所得として所得税を負担することになります。

 

②贈与

売却ではなく、贈与という方法も考えられます。

その場合、贈与を受けた側(新院長)は、相続税評価額によって評価した贈与額に基づき、

贈与税を負担することになります。

 

③賃貸

賃貸契約を結んで承継者(新院長)に貸し付ける方法です。

賃料(地代家賃)を受け取る貸主(旧院長)は、不動産収入となり確定申告が必要になります。

また、賃料(地代家賃)を支払う借主(新院長)は、歯科医院の事業の必要経費となります。

 

■診療用の器材等はどうなる?

旧院長が事業で使用していた診療用の資産はどうなるのでしょうか?

前述の不動産(診療所や土地)以外では、下記の資産が対象となります。

・歯科用材料(棚卸し資産)

・診療用機械や備品

 

引き継ぐ方法として、不動産と同様に3つの方法が考えられます。

①譲渡

旧院長から新院長への売却をする方法になります。

通常、帳簿価格で売却するのですが、中古市場での相場などを参考にして、適正な価額を設定して売却します。

簿価よりも高い価格で売却した場合は、譲渡益が発生しますので、所得税の譲渡所得として申告が必要になります。

 

②贈与

不動産の場合と同じように、譲渡ではなく贈与も考えられます。

 

③賃貸

棚卸し資産の除き、医療機器や備品については、賃貸が考えられます。

この場合、貸主(旧院長)は賃料を受け取ることになります。

雑所得として、確定申告が必要になります。

 

※不動産以外のこれらの動産については、売却することが一般的かと思います。

 

 

 

お問い合わせ

お問い合わせやご相談はお気軽にご連絡ください。
絆税理士事務所のスタッフ皆様のお悩みに真摯に向き合わせて頂きます。