医療法人設立とは
「後継者へスムーズに医院を委譲したい」「分院を設立したい」「節税対策を考えている」など、個人事業から医療法人への移行を考えておられる歯科医師の方は多くいらっしゃると思います。
医療法人の設立をお考えの先生には、メリット・デメリットをご説明し、具体的な数字によるシミュレーションを踏まえて、今後の方向性をご提案いたします。
法人設立のメリット・デメリット
メリット
給与所得控除による節税
医療法人の場合は、役員報酬として支払われるため、給与所得控除を受ける事により個人事業と比較し節税効果を受ける事ができます。ただし、医院の収入次第では十分なメリットが受けられない可能性もありますので、事前のシミュレーションをお勧めいたします。
家族も社会保険に加入することができる
医療法人を設立後、役員を含む従業員は社会保険に加入しなければいけません。その場合、家族を役員にすることで、社会保険料の半分を医療法人の負担にすることができます。(老後の生活資金を貯めることができます。)
事業承継をスムーズに行うことができる
後継者が事業承継をする場合、個人事業の場合は、後継者が新たに診療所の開設手続等をしなければなりませんが、医療法人の場合は理事長の交代手続きのみで事業承継が可能です。
事業の多角化を図る事が可能
個人事業では認められない、分院や介護事業などの事業展開が可能になります。
デメリット
社会保険の加入が義務付けられる
個人事業の場合、常勤職員が5人未満であれば社会保険加入の義務はありませんが、医療法人の場合には従業員数に拘わらず必ず加入しなければなりません。
残余財産は国等に帰属する
基金拠出型医療法人を解散した場合、拠出した基金の払い戻しを行った後の残った財産は、国等に帰属する事になります。したがって、解散時に法人内部に資産が残らないよう意識してコントロールしていくことが大切です。
事務手続きの煩雑さの増加
毎年保健所への事業報告書や資産登記、理事会・社員総会の議事録などを作成する必要があります。
医療法人設立までの流れ
医療法人を設立するまでの流れは、各都道府県によって異なりますが、概ね以下のようなスケジュールとなります。通常、認可書が交付されるまで半年程度かかる長い手続きとなります。
- 1. 定款・寄附行為(案)の作成
- 2. 設立総会の開催
- 3. 設立認可申請書の提出(仮)→熊本では年4回の受付、締め切りは各都道府県により異なります。
- 4. 事前審査
- 5. 設立認可申請書の提出(本申請)
- 6. 設立認可書の交付
- 7. 医療法人設立登記→医療法人設立認可後、2週間以内に登記を行います。
- 8. 登記完了・医療法人設立
- 9. 登記完了届の提出
- 10. 保健所への各種届出
- 11. 社会保険事務所への各種届出
- 12. 税務署他関係書類の提出
- 13. 厚生局への届出
医療法人設立認可の申請書類
必要となる書類は、都道府県が独自に定めていますが、熊本県では概ね下記のような書類が必要となります。
- 医療法人設立認可申請書
- 定款(寄附行為)
- 設立決議録
- 設立趣意書
- 設立者の履歴書
- 法人設立認可申請に関する委任状
- 社員及び役員名簿
- 役員の就任承諾書、履歴書
- 設立時の財産目録、資産内訳明細書及び負債内訳明細書
- 基金募集通知、基金引受申込書、基金割当決定通知、基金拠出契約書(又は寄附申込書)
- 拠出する不動産の登記事項証明書及びその鑑定評価書
- 拠出にかかる金融機関の残高証明書
- 負債の残高証明及び債務引継承認書
- 診療所の概要を記載した書類、図面、従業員名簿、当該施設に勤務する医師(歯科医師)全員の免許証の写し(原本を持参の上、照合を受けること。)及び履歴書
- 管理者の就任承諾書
- 設立後2年間の事業計画及び収支予算書(開設後2年間以上の経営実績がある診療所は不要)
- 不動産賃貸契約書の写し、賃貸人の所有を証する登記事項証明書及び医療機器等リース契約書の写し
- 運転資金の根拠説明書
- 医療法人設立概況書
医療法人設立認可後の届出
医療法人の設立登記が完了したら、設立の日から一定の期間内に、関係する諸官公署に各種届出をする必要があります。
個人で病院・診療所を開設していた場合、今までの診療所を廃院し医療法人として新たに医療機関を開設するという扱いになります。