歯科医院における消費税インボイス制度の影響は、どうなる?
■消費税のインボイス制度って何?
2023年10月1日より、消費税にインボイス制度が導入されます。
インボイス制度とは、消費税の納税額を計算する上で、仕入税額控除の要件として、
『適格請求書発行事業者』が交付するインボイス(=適格請求書)が必要になるということです。
この適格請求書発行事業者になるには、税務署に申請書を提出する必要があります。
そして、登録申請期間は、2021年10月より開始されております。
■歯科医院が、適格請求書発行事業者への申請の必要は?
歯科医院がこのインボイス制度の適格請求書発行事業者になる必要があるかどうかを
消費税の免税事業者の場合と課税事業者の場合に分けて考えていきましょう。
1、免税事業者の場合
自費診療収入と物販などの収入(課税売上高)が、年間1000万円以下の歯科医院では、
免税事業者といって、消費税の納税は発生しません。
基本的には、申請の必要はありません。
2、課税事業者の場合
登録申請はやっておいたほうが良いと思います。
登録申請をしたことで、納税額が負担増になることはありません。
仮に、患者さんではなく、課税事業者(企業や個人事業主)が、
事業用として、歯ブラシ等のデンタルグッズを購入した場合は、
その課税事業者は、仕入税額控除として控除できるということになります。
また、将来、インボイス制度が世の中に普及していけば、
消費者の適格請求書発行事業者に対する関心も高まってくると思います。
自費診療の領収書などへの適格請求書発行事業者の番号記載について、
ひょっとしたら、患者さんからの問い合わせがあるかもしれません。
記載のない場合の説明などが必要になるかもしれません。
適格請求書発行事業者の申請を済ませて、記載しておけばトラブルの心配もなく安心です。
■仕入先などが適格請求書発行事業者であるかどうかで、消費税の負担増もありえる?!
次に、歯科医院が購入する立場として、インボイス制度によってどのような影響があるかどうかを見ていきましょう。
1、歯科医院が免税事業者の場合 → ほとんど影響なし
自費診療収入と物販などの収入(課税売上高)が、年間1000万円以下の歯科医院では、
免税事業者といって、消費税の納税は発生しません。
ですので、仕入先や購入先が適格請求書発行事業者であるかどうかは関係はありません。
2、歯科医院が課税事業者(簡易課税)の場合 → ほとんど影響なし
仕入税額控除は、みなし仕入れ率を適用して、計算するため、影響はありません。
3、歯科医院が課税事業者(本則課税)の場合 → 影響あり
仕入税額控除は、適格請求書発行事業者が発行するインボイス(適格請求書)が要件になりますので、影響があります。
・歯科材料店、歯科技工所、その他購入先が適格請求書発行事業者であるかの確認が必要です。
(課税事業者であれば、ほとんど登録申請を行われると思われます。)
・免税事業者からの購入については、仕入税額控除はできません。
例えば、免税事業者(売上1000万円以下)への料理店やスナックなどへの支払いなど
前述の歯科技工所も、場合によれば、免税事業者である可能性があります。
・医療法人でよくあるパターンが、理事長や理事から診療所家賃や医療機器のリース料などを支払っている場合は、
物件の貸主である理事長や理事が適格請求書発行事業者でなければ、仕入税額控除は、出来なくなります。
■注意
今回の記事は、医療法人や個人事業主(歯科医院だけの所得の方)に限って述べています。
個人事業主で、本業以外の所得、例えば、商業ビルなどの不動産投資での家賃収入がある方や
講演や原稿料などの収入がある方などの場合は、判断が変わってきます。
個別事情を考慮した上での対策が必要です。
詳しくは、顧問税理士にご相談ください。
令和4年1月11日 歯科マネジメントサポーター 仕明 一宏